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共働き、子ども預けられる環境を 玉名市の美容師 前田雄さん(29)【2024熊本県知事選 若手記者企画「熊本暮らし 先輩に聞いてみた」③】
結婚する人が減っている。コロナ禍で未婚に拍車がかかり、2023年の国内の婚姻数は48万9281組と戦後最少に。厚生労働省が先月発表した出生数(速報値、23年)は75万8631人と過去最低を更新した。
「もちろん子育ては大変なこともあるけれど、家族のためなら仕事も頑張れる。結婚してみなきゃ、その良さも分からないと思うけど」。熊本市の美容室に勤める前田雄さん(29)=玉名市=は、そう言いながら子どもを抱き寄せた。
24歳の私にはまだ、結婚に明確なイメージを持てない。姓が変わるかもしれないこと、そして子どもができたら-。ただ、我が子を見つめる前田さんの表情からは、理屈だけでは言い表せない充実感もうかがえた。
前田さんは、同業のパートの妻(30)、長男(7)と次男(4)の4人暮らし。絵を描くのが好きで、イメージを形にできる仕事として美容師の道を選んだ。
一人前のスタイリストになるまで3~4年の下積みが必要な世界。専門学校に通う頃から美容室でアルバイトしていた前田さんは「20代前半でデビューしたい。福岡に行くとゼロからのスタートになる」。学生時代、数あるコンテストで熊本の美容師が上位に食い込むのを目にし、「地方でも活躍できる」と感じたことも地元に残る決め手となった。
23歳でスタイリストとなり結婚。これまで10年のキャリアを重ねる中でも、「東京では分業するところが多いが、地方ではカットもカラーもパーマもすべてできて当たり前。マルチにやれる方が僕にとっては魅力的」と熊本に根を張る意思は揺るがなかった。
店での立場が上がるに連れ、後輩が働きやすい環境づくりにも意識が向くように。勤務先は、休日取得に加え、兼業や趣味にも理解がある職場。県外からも評判を聞いた志望者が集まる。「美容師の仕事だけにとらわれずに、いろいろなことに挑戦したい人が集まれば、熊本に残りたい僕みたいな人も増える。若い人が働きやすい環境を考えていかないと」
どうすれば美容業界や、熊本で働くことを選んでもらえるか。そして結婚も。前田さんが真剣に考えていることが記者にも伝わってきた。「仕事が楽しそう」「働きやすそう」と思える環境がやっぱり大切だ。
若者が結婚、子どもを持つ人生を選択するのに必要なことは-。2人の子どもを育てる親として、前田さんは現状をどうみているのだろうか。「結婚して子どもが生まれても、預けられない、働けない、そして給料は上がりにくい。こんな状況では、結婚しよう、ってならないでしょう」。若者が結婚に前向きにならない、なれない現状に理解を示す。
ただ、家賃などの固定費が都市部よりも安く、医療費無償化など子育て支援も進む熊本なら「共働きであれば生活していける」と前田さん。そのためにも「保育園に入れないような事態を、まず解決してほしい。子育て支援策の議論で、論点がずれていると感じることもある」と指摘する。実際、働きたくても子どもを保育園に預けられずに困っている知人がいるという。
女性ならだれでも、子どもを持つと仕事に支障が出ないか心配してしまう。十分な数の保育士をそろえるためにも、待遇改善がその第一歩になる、と感じた。
前田さんは、選挙に「行ったり行かなかったり」。知事選にも関心はあるが、投票に行くかどうか、まだ決めていない。その理由は「誰がどういう政策を掲げているのか、分かりづらい」からだという。「若者の投票率が低いという『現状』ばかりが注目されて、それをどう改善するかを考える人がいない」と手厳しい。
決まって言われる「若者は政治に関心がない」。投票率が低いという事実はあっても、本当に関心がないのか。若者が投票に行かない理由こそ、掘り下げて考える必要があるという前田さんの意見には同感だ。
「若者はシビア。上の人に対しても、ちゃんと『もの申す』姿勢があるか、今までと違う『流れ』を持っているか、自分たちの声を代弁してくれるのかを見ている」。SNSで試聴回数が多い政治家の知名度は、「若者の間では高いんで」と教えてくれた。
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