「セミコン通勤バス」利用者急増 TSMCの菊陽進出で高まる役割 23年度は1.6倍の26万人
菊陽町のJR原水駅と半導体企業の工業団地セミコンテクノパークを結ぶ通勤バスが、台湾積体電路製造(TSMC)の進出を機に役割を高めている。2023年度の利用者数は、増便の効果で前年度の1・6倍に急増した。町は慢性化する交通渋滞の緩和策の柱と位置付け、利便性の向上に力を注ぐ。
4月下旬の平日の朝。原水駅では熊本市方面から豊肥線の列車が到着するたびに乗客がどっと降り、通勤バスに乗り換えるために長い列をつくった。駅北口の転回広場で待機していた大型バスは、すぐに満員となって走り出した。
バスは「セミコン通勤バス」と呼ばれる。熊本県と菊陽町、合志市、工業団地の立地企業でつくる組織が、15年度に運行を始めた。運賃は片道180円。朝は原水駅から工業団地、夕方は逆に工業団地から駅へ向かう。23年8月からは、一部の業務が始まったTSMCの新工場も経由する。
利用者はコロナ禍で減った20年度を除いて年々増え、22年度は延べ16万6536人と3年ぶりに過去最多を更新した。さらに23年度は26万6488人と一気に10万人近く増え、1日平均で初めて千人を超えた。
23年4~8月は1日平均で800人台だったが、TSMCの従業員が台湾から移ってきた9月以降は大きく伸び、1100~1400人台で推移する。
需要の高まりに合わせ、増便も続けた。21年度までは朝夕で計16便だったが、23年10月までに段階的に38便に増やした。24年1月からは土日、祝日の運行も始めた。さらに4月には年度初めに伴う新入社員らの集中利用を見込み、期間限定で最大44便まで増やした。大型連休明けの7日以降は41便を運行する。
工業団地に通勤する男性(25)は「ようやくバスに座れる余裕がでてきた。今後も今の便数を維持してほしい」と期待。別の男性(23)は「乗降場所に自動販売機や休憩所があるとありがたい。利用者の多さを考えると、駅の設備の拡充も必要では」と要望する。
町は渋滞の緩和に向け、工業団地周辺の道路整備と併せ、公共交通機関の利用促進や時差出勤の呼びかけで、流入するマイカーの削減や分散を図っている。
通勤バスの利便性向上も進め、23年春に整備した原水駅北口の転回広場にトイレを設け、雨よけの屋根を広げる計画だ。増便についても「利用状況を見ながら、今後も必要に応じて検討したい」と説明している。(草野太一)
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