故原田正純さんの生き方、漫画に 鹿児島県さつま町が発行 現場重視、水俣病患者に寄り添う
鹿児島県さつま町は、郷土ゆかりの人物を紹介する「マンガふるさとの偉人」事業で、水俣病に向き合い続けた医師の故原田正純さんの物語を発行した。町は「現場の事実を重視し、弱者に寄り添い続けた原田先生の生き方を子どもたちに伝えたい」としている。
原田さんは1934年生まれ。45年7月の熊本大空襲で母を亡くし、鹿児島県宮之城町(現さつま町)の祖父母に引き取られた。小学校高学年から中学校卒業までさつま町で暮らした。
漫画「医師 原田正純物語」はB6判106㌻。原田さんが患者宅を1軒1軒訪ねる中、ある母親との会話をきっかけに「胎盤は毒物を通さない」という医学の常識に疑問を持ち、母親の胎内でメチル水銀の被害を受けた「胎児性水俣病患者」の存在を明らかにしたエピソードを軸に生涯を描いた。
漫画は、原田さんの功績を分かりやすく伝えようと企画。B&G財団(東京)の「マンガふるさとの偉人」事業の助成金を活用し、3千部制作した。町内の小中学校や図書館に配るほか、町ホームページへの掲載も検討する。
原田さんは生前、母校の平川小での講演を楽しみにしていたが、病が悪化してかなわなかったという。中山春年教育長は「作品を通して、故郷を大切に思う気持ちも育んでもらいたい」と話す。原田さんの長女利恵さん(55)=水俣市=は「権威が嫌いだった父は『ふるさとの偉人』と持ち上げられるのは嫌がったかもしれない。でも、漫画の主人公になり、さつま町の子どもたちに会えることは喜んでいると思う」と話した。(久保田尚之)
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