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  第15回NIE全国大会 熊本大会

 <実践発表>
●自分の考え方可能に 湯前町立湯前小 黒木秀一教諭(41)

 情報には受け身になりがちな子どもたちを、「情報の発信者」にするには。黒木教諭は(1)新聞に親しむ(2)新聞を読む(3)新聞で考える-の三つの視点から、「1枚の写真・記事に学ぶ」をテーマにした活動を紹介した。

 まず「親しむ」ために身近な友達を掲載した地元紙を活用。「読む」学習では、誰もが知っている米大リーグの松井秀喜選手の記事を使った。「考える」学習では、同じ話題に関連するいくつかの写真や記事を自分たちなりに再構成する「スライドニュース」作りなどに取り組んだ。

 この結果、「子どもたちが、独自の見方や考え方ができるようになった」と報告。課題として、新聞をいかに多用していくかなどを挙げた。(飯村直亮)

●文章の要約力も向上 沖縄県北中城村立 甲斐崇教諭(38)

 北中城小の約7割の児童が新聞をほとんど読まないという実態を踏まえて、甲斐教諭は「新聞と段階的に親しむために」と題した取り組みを発表。写真に吹き出しを付けたり、ある記事の見出しと本文、写真をばらばらにして元のレイアウトに戻したりする作業を紹介。「こうした作業を繰り返し、子どもたちは楽しく新聞の仕組みを理解できた。新聞への抵抗感も減った」と話した。

 新聞の語句調べでは、記事の周囲に意味を書き込んで理解を促した。記事の感想を1分間スピーチで発表することで、文章の要約力も向上したという。「NIEを通して新聞への関心が高まり、社会の動きがより身近になったようだ」とまとめた。(飯村直亮)

●コラム使い言語力磨く 天草市立天草中 後藤孝成教諭(49)

 後藤教諭は「聴く、書く、読む~新聞コラムで磨く言語力」と題して発表。朝刊1面のコラムに空欄を作って配り、校内放送でコラムを読み上げ、空欄の言葉を埋めさせたり、見出しを付けたりする実践を紹介した。

 毎週1回、朝自習の15分間を使う。「いつでもどこでもだれでもできるNIEを目指している」と後藤教諭。

 学年ごとに平均得点を発表したり、優秀な見出しを掲示したりするなど生徒のやる気を引き出すように工夫している。集中力が身に付き、言葉に対する意識も高まったという。

 後藤教諭は「テレビ欄や4コマ漫画だけを読んでいた生徒が新聞に興味を持ち、社会に関心を寄せる機会になった」と手応えを感じている。(岡恭子)

●説明する力養う教材に 福岡県春日市立春日南中 森祐洋教諭(44)

 森教諭は「新聞で描く九州の新産業ビジョン」と題した実践を発表した。新聞記事を「新鮮で生きた情報」として活用し、生徒たちに九州の産業を発展させるための「九州新構想」を考えさせる取り組みを紹介した。

 さまざまな情報から自分なりの見方や考え方をまとめ、説明する力を養うのが狙い。

 生徒は1人ずつ観光、工業、農業のいずれかの産業発展のヒントとなる記事を切り抜き、地域の特徴などを調査。クラスで意見交換した後、総合的な構想を練り直していく。

 森教諭は「生徒たちは自ら考えることで根拠を持って人に説明できるようになる。断片的な情報をまとめ、多角的にとらえる力が身に付く」と効果を強調した。(岡恭子)

●記者ら招き連続講座 県立大津高 安岡実可子さん(17) 今村慎裕君(16) 木村孝子教諭(38)

 木村教諭と生徒2人は「知は力なり~新聞通信8社講座で学んだこと」と題し、昨年度から年10回開いている同講座を紹介した。

 講座は国公立大推薦入試の小論文対策の一環で、1~3年生が対象。報道責任者や現場記者を招き、裁判員制度や選挙報道などをテーマに開いている。本年度は1回平均約40人が参加。意見を新聞投稿する生徒もいる。

 木村教諭は「(生徒たちが)物事を多面的にとらえることができるようになった」と成果を強調。受講した今村君は「インターネット情報に比べて記者が丹念に取材した情報は信ぴょう性が高い」、安岡さんは「必要な情報を選び、自分なりに考察することが大切だ」と話した。(川崎浩平)

●大学と連携 読み比べも 長崎県立佐世保東翔高 中村明夫教諭(37)

 中村教諭は「大学と連携したNIE~他者理解から自己理解。そして新聞を飛び出し実社会へ」と題して発表した。

 同校は10年以上前から授業にNIEを採用。昨年度から実践指定校となり、今年は2年生が取り組む。

 授業では新聞のコラム欄の社会的意義などを考え、各紙の違いも読み比べている。新聞の投稿欄への掲載を目指し、コラム作りも。9月から長崎国際大社会福祉学科と連携。新聞で「福祉」「観光」を学び、大学生とのフィールドワークを計画している。

 「生徒たちには記事に込められた書き手の思いも感じてほしい」と中村教諭。自身も感動した記事は感想を添えて生徒に紹介している。(川崎浩平)

●親子で情報を交換 八代市 岩瀨みゆきさん(45) 瑳紀さん(12) 諒祐君(7)

 岩瀨さん母子3人は「親子で情報キャッチボール」と題し、新聞の利用方法を発表した。そのキーワードは「投稿」「参加する」「情報を得る」など。

 みゆきさんが新聞に初めて投稿したのは、瑳紀さんが1歳の時にけがをしたのがきっかけ。反響は大きく「新聞がたくさんの人に読まれていることをあらためて知った」という。瑳紀さんは熊日の子ども特派員として参加し、「インタビューなど素晴らしい経験を積むことができた」。

 ふだんから家族全員で新聞を読み、諒祐君は、みゆきさんに知らない言葉を尋ねて記事の内容を確認する。みゆきさんは「子どもが大きくなっても知りたい情報を新聞で得るようになってほしい」と述べた。(藤本英行)

●全園児に読み聞かせ 芦北町芦北保育園 保育士 川野晴美さん(48) 大崎智子さん(31)

 川野さんと大崎さんは、保育士の立場から「園児も分かる、感じる? 28年、毎朝続く新聞読み聞かせ」と題して発表した。

 28年間毎朝、朝礼の後に「社会の眼[め]と心の時間」と銘打って、保育士が全園児に読み聞かせ。取り上げる記事は、町内の話題や県内のニュースなどを保育士が選ぶ。「いつ、だれが、どこで、何を、どうした」に気を付けて読み、内容を解説する。

 「帰宅後に新聞で記事を確認する子もいる」と川野さん。大崎さんは「園児から取り上げてほしい記事の“リクエスト”もある」と話した。

 園児手作りのスクラップも紹介され、新聞記事に対する園児の関心の高さもうかがわれた。(藤本英行)

●記事囲んで語り合う 宇城市中央公民館 自主講座学級長 古賀結美子さん(63)

 古賀さんは「新聞で井戸端会議」と題し、公民館自主講座での活動を報告した。月2回、60歳代を中心に男女9人ほどが集まり、持ち寄った記事について語り合っている。

 水俣市で実った珍しい竹の実の記事をきっかけに、参加者で水俣に研修旅行も。水俣病資料館を見学し、理解を深めた。その後、中学生のサッカーの試合で水俣病への差別的発言があったという記事を読み、悲しみと憤りを新聞に投稿したという。今後も記事で関心を持った場所の見学を検討している。

 「男女の感じ方の違いに気付いたり、自分の考えを確認したり。結論は出なくてもいい。井戸端会議で新聞を楽しんでいます」と元気いっぱいに結んだ。(平井智子)

●堅苦しさダメ “理想の新聞”は… 熊本大文学部コミュニケーション 情報学科2年生6人

 「大学生にとって新聞って何だ!」と題した熊本大の6人は、授業の一環で取り組んだ「大学生が求める新聞」の調査・研究について発表した。

 6人は7月、県内の7大学325人を対象に、新聞に関するアンケートを実施。その結果、「実家で新聞を購読する大学生は27%、一人暮らしではわずか13%」。さらに「情報源はテレビが最多、以下携帯、パソコンと続き、新聞が最も少なかった」と、新聞が大学生に読まれていない現状を示した。

 その理由としては「堅苦しさ」と指摘。一方で、新聞の良さを世代を問わない俯瞰[ふかん]性と分析した。

 “理想の新聞”は「時事問題の解説と、幅広い世代が共感できる広告」と提案。「理解を助ける解説や就職情報が親しみやすさを生み、新聞を読むきっかけになる」と結んだ。(峰松清子)

●記事個条書き 学生に変化 名古屋外国語大 目黒博教授(63)

 目黒教授は「大学生の新聞離れとNIE」と題して発表した。5年前に大学で教え始めた際、学生の新聞離れにがく然。「社会への関心が薄れると、民主主義が危ない」と思ったという。「インターネットも原因だが、問題はネットそのものではなく、ネットしか見ない人」と指摘。新聞情報の俯瞰[ふかん]性に対し、ネットは興味ある情報しかアクセスしなくなる「タコつぼ型」のメディアとした。

 毎日、ゼミの学生に新聞を読ませて記事内容を個条書きにさせている。社会全体の動きに幅広く関心を持ち、その中でテーマを探して掘り下げるという姿勢を身に付けさせることが狙いだ。「新聞を毎日読むことで、学生は確実に変わっている」。(東寛明)

●グループ学習で切り抜き 九州看護福祉大 坂口里美助教(32)

 坂口助教は「新聞で考え、提案できる力の育成」と題し、保健師教育の中での取り組みを紹介した。

 地域や社会への関心が希薄な学生たちに、社会の現状と問題点をとらえてもらおうと、グループ学習に新聞のスクラップを活用。5~7人の小グループで、母子保健や高齢者保健、障害などの13領域のテーマから1つを選び、全員で関連記事を切り抜き。その中から問題提起したい記事を選びレポートを作成、グループ対抗でプレゼンテーションのコンテストをする。

 各グループで100枚以上の切り抜きを集めることを課題にしているという。「グループ学習を通して、視野を広げ、自分で考え抜く力を養ってほしい」。(舞永淳子)

 
  熊本日日新聞 2010年7月30日朝刊  
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