【あの時何が 被災地障害者センター編⑫】県内外に広がる理解者の輪 支えに
熊本地震発生から2年。この間、被災地障害者センターくまもとが支援した障害者は約550人に上る。支えになったのは県内外から集まった障害者福祉の理解者たちだった。
認定NPO法人ゆめ風基金(大阪市)は、阪神・淡路大震災を機に永六輔らが呼び掛けて発足。寄付金を被災障害者に役立てる活動は、今回も障害者センターの発足や運営に生かされた。このほかにも1千万円を寄付した人がいて車両購入などに充てられた。事務局長の東俊裕(65)は「在宅障害者へのきめ細かな支援が実現できた」と感謝する。
障害者と健常者が共に働く社会の実現を目指すNPO法人「共同連」(名古屋市)のメンバーも全国から駆け付け、災害支援に不慣れな在熊メンバーをサポート。社会福祉法人「大阪ボランティア協会」はホームページ開設などに関わった。
一方、東が懸念したのは理解あるボランティアの確保だった。「喉から手が出るほど多くのボランティアが欲しかったが、障害の特性を知った人でないとトラブルも生じかねない」。5月初め、コーディネート役に就いた多機能型事業所「サンシャインワークス」(合志市)支援員の岡崎民[たみ](42)はまず、支援活動を広く知らせることに力を注いだ。ただ情報が届いても、精神障害や発達障害のある人の中には「知らない人が家に入るのが怖く、支援を頼めなかった」という声も。大規模半壊のアパートで十分な食料もないまま耐えていた女性のケースもあり、社会の偏見や「生きづらさ」への無理解に苦しむ障害者は少なくなかった。
そんな不安を解消するマンパワーを支えたのが、障害者自身が運営を担う自立生活センターのヘルパーらだった。全国自立生活センター協議会(JIL)は救援本部を設置。特にJILとゆめ風基金、元県議の平野みどり(59)=熊本市=が議長を務める認定NPO法人DPI日本会議の三者による関西実行委員会が、ボランティア派遣を主導し、2017年3月末までに延べ400人を投入。さらに個人で熊本入りした福祉関係者も多かった。現場経験と専門性を備えた多くの人材を得て、岡崎は「身体や精神といった障害の特性に合わせ、ボランティアを送り出せた」と振り返る。
今年4月11日、修理を終えた自宅に戻る被災者の引っ越しをスタッフ3人が支援した。肢体不自由の女性(87)と次女(62)の2人暮らし。身を寄せていた市営住宅は家財道具が散乱し、公的な引っ越し助成だけでは動きがとれなかった。「これはどこに片付けますか?」と確認しながら作業するスタッフたち。次女は「自分だけではどうしようもなかった。ありがたい」とつぶやいた。
被災地障害者センターくまもとによる支援活動にはボランティア延べ2千人以上が関わり、その活動は今も続いている。=文中敬称略(小多崇)
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